老化現象による体の変化のなかでも、デリケートな課題として扱われるのが排尿の問題。 これまでこのページでもご紹介してきている頻尿はもちろんのこと、自分の意思に反して尿が出てしまう尿漏れ・尿失禁なども、中高年から出やすい症状のひとつです。
頻尿も尿失禁・尿漏れも同じ泌尿器の機能低下と言えますが、男女比で言うと
といった傾向にあり、その原因においては加齢だけに限らず、生活習慣や食習慣など生活環境にも深く関わっているのが、排尿トラブルの特徴とも言えます。
特に女性の尿失禁・尿漏れにおいては、
40代以上の約4割超の方が経験するほど一般的な症状
であり、男性にくらべて女性の尿道は短いといった本質的な違いこそありますが、同じ尿トラブルと言っても男性・女性で原因はさまざまですし、その対策においても当然アプローチが異なってくることは説明の余地がありません。
そこで今回のテーマは、そんな尿トラブルの原因と対策を知るうえで重要となる
頻尿や尿失禁・尿漏れの種類と特徴
について詳しくご紹介していきます。
多くの方は「トイレが近くなったな～」とか「咳やくしゃみをしたら尿が少し漏れた」といった漠然とした自覚症状しかないかもしれませんが、当然それぞれに原因があれば、その対策もあることは言うまでもありません。頻尿や尿漏れに限ったお話ではありませんが、
まずは自身の状態や症状を詳しく知ること！
単に「トイレが近いから頻尿」ということではなく、
ということを症状別に把握して、効率的に対策を取っていくことが重要です。
このページでは、そんな頻尿や尿失禁の原因の種類と特徴についてご紹介していきます。
まず、40代以降になると多くの方が直面する頻尿について見てみましょう。 頻尿の分類と特徴については下記の通りです。
≪過活動膀胱≫
膀胱に尿が溜まっていないにも関わらず、自身の意志とは無関係に尿意を催してしまう病気。加齢による老化現象がこれに該当するほか、前立腺肥大によって膀胱が敏感になっていたり、直接的な原因が分からないことも多いのが特徴。1回の排尿量は少ないため、またすぐに尿意を催してしまう傾向にあります。
≪残尿≫
年を取ると多くの方が口にする「残尿」ですが、その名の通り排尿後も膀胱に尿が残ってしまうため、またすぐに尿意を催してしまう症状。残ってしまう原因は、前立腺肥大症のほか、加齢などで膀胱の柔軟性や収縮機能が低下することで尿が出きらずに、残尿が起きやすくなります。
≪多尿≫
こちらもその名の通り「尿が作られる量が多い状態」を指し、1日の尿量が3リットル以上と定義されます。尿が多く作られる原因はさまざまで、水分の過剰摂取や飲酒、服用されている薬などがあれば、その利尿作用なども影響する場合があります。糖尿病なども症状が進めば進むほど多尿になる傾向にあります。
≪心因性≫
心因性の頻尿は、心理的要素が強いため個人差も大きく、トイレが気になればなるほどトイレに行きたくなってしまう状態。心配事や悩みといったストレスによって、お腹が痛くなる人もいれば、トイレが近くなる人もいますので、すぐにトイレに行けるという安心感があれば、頻尿症状も収まるのが特徴です。
≪尿路感染など≫
膀胱炎などが代表的な疾患となりますが、尿路に何かしらの炎症が起こることで膀胱が刺激され、過敏になることで尿意が促進されることがあります。尿路に何かしらの感染が起こると痛みを伴うことも多いので、早めに泌尿器科を受診することが肝要です。
中高年に多い尿トラブルについては、リフレ公式Re：コラム「▼中高年に多い尿の悩み・そのメカニズムと予防対策」でもご紹介していますので、合わせてご参考にしてください。
続いては、尿失禁・尿漏れについて見てみましょう。
≪腹圧性尿失禁≫
咳やくしゃみなど、お腹に力を入れた拍子に尿が漏れてしまう症状。40代以上の女性に多い尿失禁がこれに当たり、加齢などによる骨盤底筋というインナーマッスルの筋力が低下することで起こりやすくなります。
≪切迫性尿失禁≫
急に尿意を催し、我慢できずに漏れてしまうのが切迫性尿失禁で、その原因においては膀胱と脳の間で尿意の神経伝達が上手くいかず、意志に反して膀胱が収縮してしまうという点では、上記「頻尿」の分類のひとつ過活動膀胱の一種でもあります。
≪いつ流性尿失禁≫
こちらは切迫性尿失禁とは逆に、自分の意思で尿を出したくでも思うように出ず、少しずつ漏れてしまう症状。泌尿器に何かしらのトラブルがあり、その多くは前立腺肥大症であることから男性に多く見られます。腎臓に尿が溜まりやすくなることで、腎不全などの悪影響が出る場合もあります。
≪機能性尿失禁≫
認知症などでトイレへ行くことを忘れてしまったり、体が自由に動かずにトイレに間に合わないといった排尿機能自体は正常でも、物理的に排尿が上手くできない状態の尿失禁です。
これらのように、頻尿も尿失禁が相関性も高く複雑なため、症状の特定については自身で判断せず、
専門医に一度相談することで予防や対策を講じやすくなる
という点を留意しておきましょう。
上記では頻尿と尿失禁の分類と特徴をご紹介いたしましたが、例えば男性の場合、前立腺肥大症が頻尿原因となるケースが多く、さらにはいつ流性尿失禁にも併発する傾向にあったり、女性であれば腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁を併発していることも珍しくなく、その背景には加齢や出産によって骨盤底筋が緩んでいることが挙げられます。このように、
頻尿と尿失禁は相応の相関性があり
それぞれで生活の質を低下させるリスクとなりうる場合があるということを認識しておく必要があります。
「▼夜何度もトイレに起きる・・・頻尿の悪影響とデメリット」でもご紹介しているように、夜間に１度以上トイレで目が覚める夜間頻尿においては、睡眠不足や睡眠の質を低下させることで
日中の活動の質を低下させるリスクがある
ほか、尿失禁においても下着を汚してしまうなどの不快感があることも事実。 いずれの場合も根本原因を明確にして、それに対応すべく日常生活の心がけや骨盤底筋運動といったトレーニング「尿活」を習慣的に行う必要があります。
≪頻尿・尿失禁に対する代表的な予防策≫
頻尿対策における膀胱トレーニングについては、「▼頻尿対策における膀胱トレーニングのススメ」にて詳細をご紹介しておりますので、ぜひこちらも参考にしていただきたいと思いますが、特に男性に多い前立腺肥大症の原因については、加齢のほか
食生活に伴う肥満や高血圧といった生活習慣病
も大きな要因として挙げられるため、頻尿は老化現象だからと諦めるのではなく、肥満気味の方は、まずは生活習慣や食生活を見直したうえ、適度な運動習慣で肥満を解消させることが肝要。
生活習慣と頻尿の結びつきがイメージしにくい
とは思いますが、メカニズムとしては上述のとおりで、さらには膀胱を敏感にさせるストレスを解消するための入浴習慣であったり、適度な運動でストレスを解消させるといったことも頻尿対策にとって有効になるということを覚えておくようにしましょう。
記事監修：久保 明 医学博士
医療法人財団百葉の会銀座医院 院長補佐
東海大学医学部医学科 客員教授
日本臨床栄養協会 理事長
元 厚生労働省薬事・食品衛生審議会 専門委員
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