口臭と聞くと、中高年や高齢者に多いという印象を持つ方も多いかもしれません。
「▼口臭発生のメカニズムと原因細菌」のページでもご紹介しているように、実際に老化現象を背景に中高年層では口臭要因が増えるため、こうした印象はまんざら間違いではありません。
上記ページでも、加齢によって唾液の分泌量が減少することで、口腔内の細菌が繁殖しやすくなって、それが口臭原因になるということをお伝えしましたが、唾液量が減少することで、
口腔内環境は舌苔が溜まり雑菌が繁殖しやすい酸性に傾く
といったことが医学的にも明らかになっています。
つまり、口臭を抑制するためには、いかにして唾液量を増やすかが鍵となるわけです。
唾液には、リゾチームやラクトフェリンといった溶菌酵素成分が含まれており、通常はこうした抗菌機能が働くことによって口腔内の細菌をコントロールしています。ただし、加齢が進行することで、唾液を作る唾液腺が萎縮し機能が低下、さらには唾液をコントロールする自律神経の機能も低下することで唾液量は年々減少していきます。唾液量と口臭のキツさの相関関係においては、
唾液量が半減するとVSC濃度が約2～3倍になる
と言われており、イメージ的には腸内環境を整える（善玉菌を増やす）のと同じように、口腔内の乾燥を防いで溶菌酵素を増やし、口臭原因となる硫化水素やメチルメルカプタンを増やさないようにすることが口臭予防の大原則と言えます。
※VSC濃度やメチルメルカプタンについては、「▼口臭発生のメカニズムと原因細菌」のページをご参照ください。
ただし、唾液量の減少においては、加齢によって唾液を作る唾液腺の機能が低下してしまう言わば自然現象です。個人差はあったとしても、この体の変化は避けられません。
その他にも、加齢による体の変化・機能低下によって要因となる主な口臭要因は以下の通りで
口臭と生活習慣が密接に関与していることがうかがえます。
その他の要因には、老眼によって細かな部分が見えにくくなることで歯磨きが雑になる、間食や甘いもの、柔らかい食べ物を好むようになる、といった点も口臭がキツくなる原因として挙げられます。
ストレス・緊張による唾液減少
視力低下による雑な歯磨き
生活習慣病起因の口呼吸の増加
咀嚼低下による唾液分泌不足
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これまでは、主に口腔内を起因とした口臭原因についてお伝えしてきましたが、それ以外の口臭原因として挙げられるのが「呼気自体のニオイ」についてです。これまでの口臭が「口の中に原因があった」のに対して、
このくだりで紹介するのが「吐く息自体のニオイ」
例えば、何かしらの原因で胃酸過多になっている時に「吐く息が酸っぱく」感じたり、便秘や腸内フローラの乱れといった小腸・大腸の異常においては、ジメチルサルファイドなどの揮発性硫黄化合物が血液に入り、全身を巡って肺から呼気へ排出されるなどのケースです。
ちょっと食べ過ぎて胃がもたれている状態などに発する口臭は一過性で留まるケースが多いのですが、長期間の便秘や乱れた食習慣などで腸内環境が悪化しているケースは生活習慣が起因することが多く、こうした方の多くは、
口腔内起因の口臭も併発しているケースが多い傾向
にあるため、吐く息自体のニオイ＋口腔内環境の悪化によるニオイで、まさに強烈な口臭を発するリスクがあります。
ちなみに、強烈な口臭と聞いても、そのニオイの度合いはあまりピンと来ないのが実情ではありますが、ニオイを数値化すると「その深刻度合い」がある程度把握できるかもしれませんので、VSC濃度から見るニオイの強さの目安を見てみましょう。
| 口臭度合い | 硫化水素 （腐卵臭） |
メチルメルカプタン （ドブ臭） |
ジメチルサルファイド （磯臭さ） |
臭気の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 健康な人 | 10～50 | 5～10 | 1～5 | わずかに気になる程度の口臭 |
| 軽度な口臭 | 50～150 | 10～40 | 5～10 | 近くで会話すると多少不快に感じる |
| 中度な口臭 | 150～300 | 40～100 | 10～20 | 明らかな歯周病臭で手で覆いたくなるニオイ |
| 重度な口臭 | 300以上 | 100以上 | 20以上 | 俗に言う「目に染みる」レベルの悪臭 |
※図表の単位は揮発性硫黄化合物濃度ppb（parts per billion：10億分の1）
便秘・腸内環境の悪化
腸内に滞留する腐敗物やガスが、血液を介して全身に運ばれて全身性の口臭に。
飲酒・喫煙
喫煙はもちろん、飲酒もアルコールが分解される過程で臭い物質が生成される。
食生活の乱れ
味の濃い食べ物や高タンパク・高脂肪の偏食、糖分の摂りすぎなども口臭原因。
口臭と聞くと、どうしても「ちゃんと歯磨いてる？」といったように口腔内の環境にフォーカスされがちですが、便秘も口臭要因、食生活も口臭要因、つまり生活習慣そのものが口臭の有無に深く関与してくるため、日常生活における心がけが口臭予防には重要なのです。
相対的に口臭がキツい人の傾向として、肥満であったり、便秘であったり、タバコ臭かったりと、見るからに不健康そうな人が多いのも事実。もちろん偏見はありますが、それらが総じて「オジサン」が該当するため、オジサン＝口が臭いという印象が定着しているのかもしれません。
前段のとおり、口臭原因は多岐にわたり、自然現象である「加齢」もまた口臭をキツくする原因でもありますので、致し方ない部分もありますが、
自らで対策・解消できる口臭要因の方が多い
のも事実ですので「歯周病対策・唾液量増加・胃腸の正常化」を軸に、まずは生活習慣や食生活を見直すことから始めてみましょう。具体的には、
まず虫歯や歯周病の治療
虫歯や痛みがなかったとしても定期的な歯科検診・口腔内起因の口臭原因を断つことは、歯科医の専門領域でもありますので、口臭対策の初手としては欠かせません。
次に肥満解消による唾液量の正常化
肥満の方はどうしても口呼吸の頻度が高まります。常に息苦しかったり、少し動いただけでも息が上がってしまったり、就寝時は高い確率でいびきをかきます。肥満を解消するだけでも口呼吸の頻度を減らすことできますし、それが口腔内の乾燥を防ぎ、口臭の原因となる細菌の増殖も抑えます。加齢で減少する唾液量を増やすことを念頭に置きましょう。
最後に食習慣改善による胃腸の正常化
中高年になっても、若い頃と同じようにジャンクフードや焼き肉といった高タンパク・高脂肪・高カロリーの食生活では、当然生活習慣病の要因となりますし、口腔内で言えば揮発性硫黄化合物も生成されやすいのは言うまでもありません。さらには、腸内環境も悪化して便秘にもなりやすく、味が濃いため水分不足にもなりやすい傾向にあります。これらを勘案してもわかるように
食事や運動を含めた生活習慣全般が口臭と関連している
ということをしっかりと理解することが、口臭予防・口臭対策の第一歩となるのです。
これら日常生活の小さな習慣の積み重ねが、大きな効果につながることを実感できるでしょう。
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